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水彩スケッチ :道具2 (その後) (携帯用 固形透明水彩絵の具、水彩色鉛筆)

< 水彩絵の具 その後>

 最初に書いた「のんびり 行こうよ; 携帯用の道具のこと・・固形透明水彩絵具、水彩色鉛筆」のページでは、透明や不透明といった絵の具の性質を説明したり、スケッチの際に携帯する固形絵の具の話を書いた。

 さてその時点から比べると、このところ大分「水彩画用の道具」が揃ってきた。

 最近になって(透明)水彩絵の具の感じのよい製品を幾つか購入したのだった。どれもみな便利な品であり、またどれも洒落ていて、<道具>としてかなり良い質感を持っている。

 気に入った物件なので、ここでちょっとご紹介しようと思う。

関連ページ; のんびり 行こうよ; < 携帯絵の具 その1 >


<シュミンケ・ホラダム社の透明水彩絵の具(携帯用) 12色>

シュミンケ・ホラダムはドイツの絵の具メーカーだ。

発色の良さで世界中にこの絵の具の愛好者が多いのだという。

私は無知であって、このメーカーの事を知らなかったのだが、絵の具の各メーカーの特性をWEB上で調べていたらその評判に巡り合ったのだった。

その評判を知ってしまうともういけなくて、絵の具の具合がどんな感じなのか、また、その金属ケースの質感などが気になって仕方が無くなった。

結局、そうした訳でこの会社の絵の具を手に入れることにしたのだった。
携帯セット(シュミンケ・ホラダム12色)

セットは様々な状態で、12色のハーフ・ケース、12色のフル・ケース、24色のフル・ケース、
それに8色の水入れ付きのケースとなっている。

12色のハーフ・ケースのものは使い易そうな筆もセットされている。またケースはすべてメタル製のしっかりしたものだ。パレットがホーロー引きの様な状態なので、実に具合が良い

携帯セット 12色 (シュミンケ・ホラダム ドイツ)
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 言うまでも無く「絵の具」は消耗品である。それを使って絵が完成していく毎に、「画材」である絵の具は消費されて減っていく。だから補充が必須となる。

 そうなると、同じ色が必ず入手できる保証がないかぎり、その絵の具を使うという訳には行かなくなってしまう。変わらずに同質、同一のものがいつでも手に入れられるという事が、絵の具選定の基準となろう。

 当たり前の事として期待しているが、実は良く考えてみると、これは大変なことに違いない。昔であれば絵の具は様々な素材から自分で調合して作り出したのであるし、日本画の世界などは未だに手工業的なその歴史を引き継いでいる。

 いつでも同質の製品が供給され続け、どこにいても製品の入手が容易に出来なければ、そして安価に提供されるモノでなければ、恐ろしくてその製品を選んだり購入したりといった気分にはなれないだろう。

携帯セット(シュミンケ・ホラダム12色)

この会社のすべてのセットには、収納された絵の具に応じた「カラーチャート」が作れる台紙が同封されていた。

これは便利この上ない行き届いた嬉しい配慮ではなかろうか。

私は長く使っているウインザー・ニュートンの携帯用透明水彩絵の具セットで、このカラー・チャートを手作りしてパレットケースにセットしていた。

そもそもメーカーが専用の台紙を入れてくれ、実際の絵の具を溶いてチャートを自分で作る事が出来る、というところが何とも素晴らしい工夫ではないか。
さすがに質実剛健かつ合理的なドイツ・プロダクトの賜物といったところだろう。

12色のセットは24色用のケースに収納されたタイプと半分のジャスト12色サイズのケースとがある。(いずれも金属ケース)
携帯セット(シュミンケ・ホラダム12色)
両セットともに収納された12色の内容は同じで、以下のとおりだ。

レモンイエロー、カドミウムイエローライト、カドミウムレッドライト、パーマネントカーマイン、ウルトラマリンファイネスト、プルシャンブルー、フタログリーン、
パーマネントグリーンオリーブ、イエローオーカー、
イングリッシュベネチアンレッド、セピアブラウン、
アイボリーブラック
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 そのように考えてくると、どうしても選択の基準が狭き門の様相となって来るようである。しかし、そうなるのは仕方がない事だろう。

 そういった「同じモノを製造して提供を継続する」という姿勢は、もうメーカーサイドの歴史認識の問題なのだと思う。素材革命が劇的に進んでいる変化の激しい世の中にあっては、その姿勢を「良心」と言い表しても良いかも知れない。

 「きちんとした歴史(確かな伝統といっても良い)のある製品」という話をさらに詰めて行くと、私の様な素人にとって安全な方策は「定評のあるメーカーの製品を選択する」という事に行き着くのだろう。絵の具に関して言えば、実に多くのメーカーがあり、さらに名も知らない出自を持った製品が安価で売られている。

 色変化がないという視点で、どのメーカーの品物を購入するのかと考えてみると、巷に溢れる多くの絵の具の中からどれを選ぶべきかという選別がすすむだろう。

 これはと思うほどの候補は、おのずと次第に絞られてくるように思う。

携帯セット(シュミンケ・ホラダム12色) ケースの底面の様子。
屋外スケッチで役立つ指掛けが付いている。

軽量化を目指しての事だろう。ステンレス製の番線というところが心憎い。


いかにも道具感が満載の世界ではないか。
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 国内で言えば、老舗メーカである「クサカベ」や「ホルベイン」などの透明水彩絵の具。そして海外製品で言えば、英国製ではラウニーの「アーティスト」やウインザー・ニュートンの「プロフェッショナル」、オランダ製ではローヤル・ターレンスの「レンブラント」、ドイツ製ではシュミンケの「ホラダム」などの名品の名前が候補に挙がろう。

 こうした製品であれば供給状況も安定しているし、素材としての品質に間違いがあることは、まずないと言えよう。

 というわけで、上に挙げた製品のストックを作ろうとして、様々のメーカー製の絵の具および携帯セットを入手した。

 どれもみな逸品ぞろいで不満はまるで無いのだけれど、それぞれの商品が世界的な物件であるから、国内売価をみると現地での流通価格をはるかに上回ってしまっている。

 気軽に手が出るような価格帯ではなく、画材店でそれらを見つけて確かめてみると、どれも大変に高価な商品ばかりなのだ。

携帯セット(シュミンケ・ホラダム8色)

収納された色は、
ウルトラマリンファイネスト、パーマネントカーマイン、カドミウムレッドライト、レモンイエロー、
セピアブラウン、イエローオーカー、パーマネントグリーンオリーブ、プルシャンブルー

< シュミンケ・ホラダム社の透明水彩絵の具 (携帯用) 8色+水筒付き>

こちらは8色のセット。
4色増やして12色の収納が出来る。


さらに、本体はパレットだけでなく水入れになっており、キャップ部分が洗筆壺になっている。

実に細やかな工夫が為された、優れものといえるだろう。
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 だから私などでは、画材屋さんの店頭に並ぶモノを恨めしく眺めつつ、「とてもではないが通常の流通状態の商品では購入できないな」と深い嘆息を漏らすしかないのだった。

 新宿の「世界堂」さんは贔屓の画材店で、豊富な品揃えと割引が大盤振る舞いの素敵な店だ。だから私は店の会員でもあり、画材は勿論、手帳などの文具なども数多く扱われているので、この店を良く利用している。しかし、その目の覚めるようなナイスな状態の割引率をもってしても、やはりまだまだ高額である事には変わらない。

 そこで頼みの綱ともいえる手段をとった。つまり、とうとうネット上でそれらの逸品を探したのだった。

携帯セット(シュミンケ・ホラダム8色) 携帯セット(シュミンケ・ホラダム8色)
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< 道具としての「絵の具」 >

 透明水彩の「絵の具」はもちろん<道具>ではなく画材である。絵を仕上げていく為の材料であり、消耗品である、だから絵を描く度に、確実に減っていく。

 絵の具の根本は固体物である。固形化されて容器に収納された状態のパンの内容である絵の具は、一見消滅して目減りしていくのだが、それはどこかの彼方に消え去ってしまったのではない。

 中学生の頃の化学の時間に習った物理法則である「質量保存の法則」からすれば、絵の具は紙の上に転移されたものと解釈できる。そのように正確に考えてみれば、決して消費されて失われてしまった訳では無いのだ、といえよう。

 しかし、時間と共に使える残量は必ず減っていくモノなのも確かな事で、気持ちの上ではなんとかストックを確保しておきたいところだろう。


< シュミンケ・ホラダム社の透明水彩絵の具 8色+水筒付き>

これは、12色のハーフ・ケースのセット 必要にして充分なセットである。

このセットには使い易そうな5号の絵筆も付属している。
携帯セット(シュミンケ・ホラダム8色)
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 さてその絵の具であるが、これはパレットに準備して固体化しておく形になろう。

 その手当てのためにチューブで持ち歩かずに、軽やかに携帯が出来るわけだが、そうした準備をしなくても予めパレットとセットになった製品が発売されている。

 携帯用の小型パレットに小さなプラスチック製の容器がセットされ、そこに固形化された絵の具が収納されたものだ。

 こうした製品であれば、小型であり、しかも軽量で済む。そのため、絵の具や道具を持ち運ぶ事が負荷とならない状況が作り出せる。

携帯セット(シュミンケ・ホラダム8色) 携帯セット(シュミンケ・ホラダムのパン)
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 前にも書いたが、私のような屋外でのスケッチを主体にして絵を描いている者にとっては、絵の具の形状というか、その種類というか、状態を改めて考えてみると<固形絵の具>を携帯するという選択が最良のものとなるだろう。

 散歩や低山ハイキング、あるいはポタリングや写真撮影行など、といった屋外の様々な行動時には手荷物の重量は大切に検討すべき大きな要素である。

 背にした荷物の大きさが行動半径を決める事になることも多いからだ。

 だから固形絵の具がコンパクトに収納された便利なセットを携帯することが大前提となる。収納容器がパレットを兼ねていることは勿論、絵の具と共に絵筆などもセットできれば一番だ。

 画材屋さんへ足を運んでみると、誰しもが同様に考えるようで、そうした携帯用の固形絵の具の商品は種類も多くて、色数やセット内容などを含めて販売される状態もさまざまに取り揃えられている。

 だから利用する側の私達は、その時々の目的に合わせて、好みのものを選べることになる。

携帯セット(ウインザー・ニュートン プロフェッショナル24色) 携帯セット(ウインザー・ニュートン プロフェッショナル24色)

< ウインザー・ニュートン社の透明水彩絵の具 
   アーティスト・シリーズ >


英国製のウインザー・ニュートンのコットマンシリーズを利用しているが、こちらはアーティスト・シリーズ。

コットマンに比べて、そのグレードは数段上の上品位の絵の具である。

こちらも、ケースはしっかりとしたメタル製で、軽量で強靭な作りが為されている。

ドイツとは考え方が違う英国人気質を表している。カラーチャートは優れたカラー印刷物が付属する。

実物の絵の具の色合いではないが、印刷とはいえ品質が良いものだ。実物とチャートとの違いは、かなり少ないように思う。
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 そうやって検討し、手当をして用意した絵の具を含んだスケッチセット。画材のひとつだった絵の具だが、パン(プラスチック製の容器)に入れられ、それが携帯用のパレットに収納されると、「道具」へと様相を変化させてくるから不思議に思う。

 <道具>に変わった絵の具は、それまでの形態であった<絵を仕上げるための材料>とはちょっと性質そのものが異なってくるように感じている。

 モノに対して「趣味性」や「好みの傾向」、さらには「愛着」といったそこはかとないもの、それは表現することが難しい「様々な想い」といったらよいだろうか。その想いが物件との関係を深めてくる。

携帯セット(ウインザー・ニュートン プロフェッショナル24色) 携帯セット(ウインザー・ニュートン プロフェッショナル24色)

 もちろん、絵を描くことが職業ではないのだから、当たり前の話だが、私にとっての「絵の世界」は職業人や職人のような尖って対峙しているような差し迫ったきわどい関係ではない。

 だから改めて<道具>と大仰に言ってみても、それは実務を支え、実利を目指した類のモノではなかろう。道具となった物件の性質は、あくまでも趣味のものという事に終始するのではないだろうか。

 そうなってくると実用性とは無関係に、まさしく趣味性を道具そのものに追求するといった在り方も可能になる、と思うのだがどうだろう。

 スケッチ用の透明水彩絵の具を「固形絵の具」にした事で「携帯するのに便利なモノ」となり、さらにそうして絵の具は常時携帯されることによって「道具」へと変化していく。そしてそれが昂進していくと、今度はいよいよ道具から離れ始めて、ひとりでに歩き始めるのではないだろうか。

 通話機であった電話が携帯化される事で道具としての機能を満載し始め、さらにそれを携帯する持ち主(利用者)の想いがこもって行って、次第に好みのデコレーションで外装が補強・強化されて行く様子に、どこか似てはいまいか。
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携帯セット(ディーラー・ラウニー アーティスト24色)
< ディーラー・ラウニー社の透明水彩絵の具 (携帯用) アーティスト・シリーズ >

こちらもウインザー・ニュートン同様のイギリス製のディーラー・ラウニー社製の携帯水彩セット。

ウインザーとファンを分ける、人気製品といえよう。「アーティスト」というシリーズだ。

ケースが梨地で仕上げられていて、一段上野高級感が漂っている。内容は変わらず、24色のセットである。パン列の間の空間に筆や鉛筆が収納できる。

パン(プラスチック製の収納容器)も横置き状態で収納すれば、6個程度は追加して携帯できそうだ。

カラー・チャートは、ウインザーよりもさらにイイ感じの印刷で、質感も良いし、色再現も素晴らしい。

 そのような事を考えていたら、ひとつ思い至った事がある。大分昔の話で恐縮であるが、コンパクト・カメラがデジタル化される前のことを思い浮かべたのだった。

 趣味で写真撮影をしている者にとっての「コンパクト・カメラ」が占めたモノとしての位置は、勝負カメラである主力機の一眼レフに対するサブ・カメラといったもの、つまりは補助的な役割を担ったモノに過ぎない状況であった。

 ワイシャツのポケットに収納でき、卓上のA4用紙が撮影できたり機内食が座ったままで撮影できるといった抜群の焦点距離と撮影倍率を備えたことを謳った製品があった。

 リコーやコニカの素敵な製品シリーズだ。RシリーズやビックMINIなどの人気シリーズがそれで、私はそれらが気に入って累代の製品を購入していたのだった。そうやって発売されるたびに購入を重ねていったのだが、従来のサイクルで繰り返されるモデル・チェンジとは別に、突然「限定品」が発売される事があった。
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携帯セット(ディーラー・ラウニー アーティスト24色) 携帯セット(ディーラー・ラウニー アーティスト24色)

 例えばそれは、今行われているような塗装色を変えたといった程度の改変レベルではない。

 金属外装が装備されていたり ―それは新しい金型を起し加工ラインを整備するという事を意味している。製品にとっての投資規模が実に大きなものになる― 、皮製のケースがコンセプト・デザインで統一されてセット化されたり、さらにはレンズ自体の構成がより優秀な状態に変わったり、といった変更が加えられたモノであった。

 これまでよりも一段階以上に突き抜ける、ハイグレードな製品が登場する場合があったのだ。そんな状況の中で、コンパクト・カメラ界でも大きなシェアを確保していたオリンパス社が発売した素晴らしい限定品があった。

 それは和テイスト満載の限定品であった。映像機能とは何の関係もない改変であり、人気機種「μ(ミュウ)」の外装が漆塗装された逸品が発売されたものだった。

 当時のコンパクト・カメラに関して改めて考えてみれば、道具であったカメラが携帯性を突き詰めていった結果、品質や性能などもまとめて携帯するという方向でパッケージングが施され、そのコンパクトさの中にすべてを包含していった様に思う。
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携帯セット(ディーラー・ラウニー アーティスト24色) 携帯セット(ディーラー・ラウニー アーティストのパン)

 漆塗装で外装を仕上げることで高品位の製品に仕立てたというものだったが、撮影道具であった機能からさらに進んで、機能や性能とは縁の薄い「侘び寂びの世界」に通じるような<趣味性>を追求し始めたのだった。

 発売時にはその情報を逃してしまって気が付かなかったのだが、何となく中古店を覗いている際にショー・ケースに未使用品が置かれているのを眼にした。一瞬でメーカーの意図を理解した私は、迷う事無くその素敵なカメラを購入したのだった。
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携帯セット(ローヤル・ターレンス レンブラント12色)

< 蘭 「ローヤル・ターレンス」社の透明水彩絵の具 >

こちらは、ローヤル・ターレンス社の携帯水彩セットで、レンブラントというシリーズの製品。

ここまできちんとした化粧箱にケースが入っていると、まるでギフト専用製品のような感じが漂う。

さすがに高級品指向で貫かれており、付属する絵筆はセーブル。パッケージには「The Professional Choice」と書かれており、「Artists' QUALITY」ともある。

プロの利用に耐える品質が突き詰められているのだろう。
携帯セット(ローヤル・ターレンス レンブラント12色)

 ところが、なんだか持ち運ぶ事で外装が痛まないかといった本末転倒な些事が気になり、携帯すること自体がなんだか勿体無くて、そのカメラを使う踏ん切りがつかないでいた。

 そうするうちに銀塩フィルムの世界はいつの間にか終焉してしまい、銀塩カメラの機能そのものが骨董品的なものになってしまった。

 だからその物件は時の彼方で時間の進行を停めてしまい、まさに趣味だけのモノと化したのだった。つまり、存在する事自体が意味を持つ世界に陥ってしまったというわけだ。

 長い引き合いになったが、つまり携帯固形絵の具の世界も同様であろう。もし日本のメーカーが市場に深く絡んでいれば、カメラなどと同じ方向の製品が出現するのでは、と思うのだがどうだろうか。
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携帯セット(ローヤル・ターレンス レンブラント12色) 携帯セット(ローヤル・ターレンス レンブラント12色)

 金属ケースの外装面が粉体塗装や梨地仕上げといった高級な仕上げを施された限定のセット商品や、(たとえば漆風パレットが今でもあるように)絵の具の携帯ケースにおいても焼付け塗装といった具合ではなく、漆そのもので塗装を仕上げられた秀逸なケースなどが出現するのではなかろうか。

 そういった和風コンセプトを秘めた製品は機能性を重視する海外製品ではあり得ないだろうから、当分はその方向に進んだ尖った商品が出現する可能性は無いのではあるが・・・。

 だが、江戸の職人技の粋を込めて丹精して仕上げたような伝統的な日本情緒の溢れる感性で仕上げた外装や工夫が施されているような素敵な商品であれば、その普遍的な価値に魅入ってしまって、誰もが食指を動かすはずだと思う。敢えて和風に仕上げずとも良く、モダンで都会的な雰囲気を醸しても良い。

 日本人だけでなくヨーロッパなどでも、そういったコンセプトは理解されるに違いない。和風の装いを例に引いたのは、それが判り易いものだからである。そろそろ趣味性が高い状態の携帯用の絵の具ケースが好まれる頃合ではなかろうか、と思っている。
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< 水彩用の筆 について 人口素材と天然素材>

 絵の具の確保と共に、水彩道具として無くてはならない「絵筆」に関しても、絵の具同様にネット上を中心に調達を行った。そちらについてもここで少し紹介してみよう。

 中学時代の美術教師が勧めた「ナムラ」の絵筆を、私は長く使っている。高級品というほどのランクの物品ではなく、中学生の小遣いでもなんとか買える程度の、1000円前後の製品だ。

 ナムラの絵筆は余り値段が変化せず、密かに物価の優等生だと思っている。そんな昔から他社の筆の値段がどうだったかを知らないので「ナムラ」と区切って言ったまでで、実はどのメーカー製の筆も同じ様な状況なのかもしれない。美術部員だった中学生当時に購入した価格と、大して変わらない安価で今でも購入できるのが有難い。

 その描き味が素晴らしいもので、直ぐに中学生の私を虜にしたのだった。だから私は、それ以来の長きに渡って面相筆と平筆を愛用し続けている。そして世紀が変わった近頃では、(以前のページでも書いたが)携帯性が良く便利この上ない「水筆」が主体に変わっている。

ローヤル・ターレンス レンブラントのパン

< 蘭 「ローヤル・ターレンス」社の携帯絵の具のパン (プラスチック製の収納容器)
 レンブラント・シリーズ >

パン(プラスチック製の収納容器)の側面には絵の具の色番号がある。

こんなプラスチックの容器でさえも、きちんと側面や底面に加工がされている。

なんともアイデンティティ溢れた仕上がりになっている。

どこを取ってみても、高級な雰囲気であり、良質な仕上げがされている。

安心して使え、その質感が心地良い。

さらに「モノを所有する歓び」といったものも味わえる逸品だ。
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 絵の具を物色しているついでと言ってはなんだが、絵筆に関しても探してみたら色々と見つかったのだ。

 ネット上で見つけて入手したのは、フランス製の「ラファエル」社の水彩筆である。実に良い仕上げがされた秀逸な製品で、「水彩画の描き方」などといった教本などでも盛んに紹介されていた筆だ。さすがネットの威力とでも言おうか、憧れていた実物を思わぬ価格で入手できたのだった。

 外国製のキチンとした筆は高価なものである。しかし、ちゃんとした職人が技を込めて作ったものなので、品質は確かであり、結果として買い換える事無く長く使えるものである。価格だけに着目してしまうと、どれも一見高価に感じてしまうのだが、実際の筆が備えている品質からすれば、意外に安価なのだと思う。

ラファエル筆 赤テン、カザンリス ラファエル筆 赤テン
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 <筆>こそ、まさに絵を描くための必須の物件。道具の真骨頂がそこにある。だから筆は、選んだほうが良い。

 その利用期間、つまり購入製品の寿命のほどは、― 追求した事がないので詳細には判らないが― ナムラを例にとってみれば数十年間は利用できるものだ。このため、価格が高いといっても充分に回収が出来るものだろう。その高い品位の恩恵に与れるものだし、そういう意味では筆に対して行った投資は充分に取り戻せると思う。

 考えてみれば明らかなことがある。私の年代でキチンとした優秀な筆を買うのであれば、多分それは一生ものになるであろう。筆よりも、むしろ我が身の方が先に滅ぶのでは、と思うからだ。

ラファエル筆 コリンスキー
< 仏 「ラファエル」社の絵筆 (水彩用)
 赤テン、カザンリス、コリンスキー>


ラファエル社はフランスの伝統ある絵筆のメーカー。

憧れの製品といっても良い、高品質な天然素材の筆を多彩に展開している。

この小筆の素材は、コリンスキー。間の掲載はカザンリスと赤テンの天然毛を利用して作られたもの。それも充分に高級品なのだが、こちらのグレードはさらにそれを上回る。 「コリンスキー」とは、シベリア等北部に生息するイタチのこと。その毛で作られた筆は「コリンスキー、レッドセーブル、セーブル」と呼ばれる。

それぞれがグレードの違いを意味している。


「セーブル」も同じ種の毛なので質感は似ているし、同じように高級品なのだが、セーブルよりもコリンスキーのほうがさらに高級品といえる。
つまり、世界最高品質の絵筆、という事になる。このため、7号の水彩用の絵筆一本に対して諭吉さんが一人必要になるのは仕方が無い。

その素材で作られた筆は保水力に優れ、独特の弾力性が実に心地よいのだと言う。


・・・勿論、貧乏性の私としては、まだその封を切る事が出来ないでいる。
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 さて今回。改めて揃えたのは丸筆の小筆が中心であった。

 太い号数の筆はかなりの値段になって集中して購入する訳には行かないので、こちらは世界堂でセット販売されている国産品を買った。

 絵の具でお馴染みのホルベイン社の製品で、シリーズAというもの。3号、8号、12号、15号の丸筆で、それぞれが500円程度のランクになる筆で、残念ながら筆の毛は天然素材ではない。

ラファエル筆 赤テン、カザンリス ラファエル筆 赤テン
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 小筆として揃えたのは、携帯用の国産品と、携帯もできる軸の短い外国製品だ。フランスの「ラファエロ」社の丸筆。どの号数の筆も素敵な天然素材を奢ったものである。

 教材本(ノウハウの参考本)にも書かれていたとおり、毛足の弾力性は素材によって変化する。だからそこに「好み」の問題を孕んでいる。

 高額の商品ほど品質が高まるし、そうなるとコシとか保水具合とかといった性能も上がるようだ。しかし筆は道具であるから、素材の性質と自分の感性や感覚との相性がまず問題となる。このため「高ければ善」という一律な世界が横たわってはいない。

ラファエル筆 コリンスキー
先の小筆は0号から
1号、2号・・・6号くらいまでのもの。

そしてこちらは、4号から8号まで。
コリンスキー筆は「ひと財産」と呼べる内容の物件だ。
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