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2008.11.25
善光寺

アクセス;
 JR信越線―長野駅より長野電鉄バス

カメラ;
 RICOH CAPLIO GX−100 24−72mm F2.4


 「霧が出ているのか」と思ったら、一面の雪であった。

 軽井沢から佐久までは、すっかり着雪した凍てついた風景が続いた。上田の辺りでは曇り空であったが、それでも山際が白かった。
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車窓から垣間見た冬景色

 長野駅へ着くと路面が濡れている。

 夜間、冷たい雨が降ったらしい。

 幸いにも、市街は雪にはならなかったようだ。どんよりとした曇り空に覆われているが、その色は明るく、天気がこれから悪くなっていく時の山添いの鉛色の空ではなかった。

 勿論、さいたまから比べると空気は冷たいが、晴天ではない為に返って暖かいのかも知れない。

霞たなびく町 門前に連なる宿坊
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山門 風神、雷神像

 仕事までは、一時間ほどの余裕がある。その間を利用して、「善光寺詣り」をする事にした。

 晩秋の善光寺へ訪れるのは、今回がはじめてであるからだ。

 前回(2006.05.12 「善光寺詣り」)も、やはり仕事までの僅かな時間を利用した「ついで参り」であった。実に遺憾なことなのだが、こうした事も仕方があるまい。あのときは春先で、善光寺へ抜ける街並みには綺麗に咲いたフラワーバスケットが道脇に飾られていた。

 ただでさえ、美しく景観を統一された街並みが、それらの花で一層引き立っていたものだ。私はその様子をみて、この町が一遍に好きになってしまった。

破風作りの門
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 町の玄関口であるJR長野駅から、善光寺までは少し距離がある。長野がいくら善光寺を中心に栄えた門前町であるとはいえ、鉄道の方が施設された歴史がずっと新しい。そのため駅は寺から遠い位置にある。

 故郷前橋は城下町であるが、長野と同じくJRの駅前はむしろ閑散としている。市役所や市街地は駅からずっと離れている。大抵の町は駅が市街の中心であろうが、地方都市ではどちらが多いのだろうか。

大勧進 六地蔵

 善光寺は市街の奥まった場所にある。こういっては何だが、平野ではなく古くは善光寺平といった台地(丘陵)であるのでもう少し行けば山並みが始まる。その丘を少し上って行けば、やがて、蕎麦で有名な戸隠へ続く道が始まる。

 こうした土地であるが市街はむしろ平坦で、坂道などは無い。比べれば都内のほうが街中の坂道が多いくらいだろう。切り通しのような場所や高台や長い坂などが、都内には一杯ある。

 平坦ではあっても、すぐ間近に山が迫っているので冬の冷え込みは激しかろう。池波正太郎氏の名作「真田太平記」で有名な土地である上田も、地形が長野とよく似ている。あそこも冬の冷え込みはひとしおだ。仕事でよく訪れた土地であるが、冬の寒さには正直参った記憶がある。底冷えというか、芯から冷えてくる冷たさがある。

大勧進
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山門の次に現れる大きな門 本堂

秀麗な本堂

 長野市街は、バス路線がJR長野駅を中心に発達しているが、駅前から善光寺の入り口までは特別料金が設定されていて、わずかに100円で利用できる。

 地方のバスは、たとえば公営の「都バス」とは違って、どんどん料金表が上がっていって時に怖くなる事がある。車が無いと生活自体が出来ないような場所では、路線バスの存在が重宝するが、反面、そうした地方ではマイカーの所有率も高く、バス路線が僅かな距離でも高額となる場合が多い。

 そうした地方交通の状況から思うと、この100円の料金設定は破格の扱いだ。長野は元々、ガソリン代が高い。

 今年の狂乱的な油脂代の高騰のおりには、価格維持がさぞや大変だったろうと思う。
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本堂

 さて、門前でバスを降りると参道の大通りが突き当たりになって、車の進入はここまでとなる。

 バス停からは善光寺の山門が見えるが、入り口からそこまでは小さな支院であり宿泊所でもある宿坊が続く。趣のある宿坊だけではない。参道にはさらに多くの土産物屋や休憩所が続き、皆、早朝から店を開けている。

 現役の信者たちの寺であるが、関東では有数の観光地でもあって、早い時間からお参りする熱心な人々が多いのだろう。

 この辺りの様子が面白い。
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鐘突き堂の横のもみじ

 善光寺の本堂の裏手にまわると、鐘突堂が現れる。

 本堂の軒下にも大きな鐘が釣られていて、時刻になると突かれるようだ。ちなみに、寺関係者以外は突かないように、との注意書きがある。鐘を突いてしまう観光客が多いのだろうが、「時の鐘」であって正時に突かれる大きな鐘の音があたりに響いている。

 鐘突堂の横は寺務所があってちょっとした庭ある。規模はこじんまりとしているが、そこには美しいもみじが植えられていた。

 鮮やかに色付いた葉やそれを支える枝に、昨夜からの雨の雫が静かに輝いていた。

雨の雫が光る 色付くモミジ
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銀杏の絨毯

 鐘突堂から本堂の裏手を回っていくと、寄進された多くの石灯籠が現れる。

 巨大な灯篭が整然と並ぶ様は圧巻だ。寄進者の名前や年月が彫られているが、遠い地名や江戸時代などの古い年号があって、この寺院への信仰の篤さが伺える。

 並ぶ石灯籠をまわると、やがて庭園が現れる。もみじも植えられているし、銀杏も植えられているが、一画には多くの躑躅が植えられていて、これら夥しい数の躑躅も全国の信者からの寄進であるらしい。
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経堂

 その躑躅の向こうに、渋い建物が見える。「経堂」で、文化財に指定されている重厚な建物だ。

 太い梁が質実剛健で、なによりも大切な経典を守る力強さがある。

 屋根の感じが、またいい。苔むしていて年代を感じさせる。

本堂 大勧進
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市街の様子

 善光寺の周りを歩くと、ふと気付くことがある。周りには自動販売機が見あたらないのだ。

 門前から駅へ向かう大通りもやはり同じだ。派手なデザインの缶やボトルが並ぶ販売機の無骨な箱が無いだけで、街の印象がこうまで変わるのか、と思う。

 景観条例によって通り沿いの街並みが統一されていて、その風景の中に異質なものが混じっていないので、なにより気ぜわしさが無く落ち着いている。

 あの箱があるだけで、街の風景が殺伐とする。私達が便利さの代償に実に多くのものを失っていることにあらためて気付かされる。
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さて、本日の旨いもの


 信州、長野の名物といったら「信州味噌」と「戸隠蕎麦(とがくし)」と「七味唐辛子」だろうか。

 戸隠蕎麦は買わなかったが、七味は買った。善光寺門前に店舗があるがJR長野駅のNewDaysなどでも手軽に買うことが出来る。善光寺がデザインされた赤いブリキの筒状の入れ物で「八幡屋 磯五郎(やわたや いそごろう)」。

 私は長い間、味が一種類だと思っていたが、この七味には大辛と中辛の種類があるらしい。蕎麦に実によく合うし、実は親子丼などにさっと一振りしても良い。さらには焼き鳥などには最高の組み合わせだ。

長野電鉄の駅そば こちらは乾麺
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 「七味」だけ買ったのでは、片手落ちであるので蕎麦も何種類か買って試してみた。NewDaysで売っていた「信州限定 そばの里」という生蕎麦が美味しかった。

 JR長野駅の「長野電鉄」側改札にある「駅そば」も美味しい。駅そばにぴったりの濃い口の汁で、なにより掻揚げが美味しい。「掻揚げだけで持ち帰らせて欲しい」といったが、蕎麦に合わせた単独の販売はしても、持ち帰りは駄目なのだそうだ。折角お土産にと考えたのだが、残念だがあきらめる事にした。

乾麺の方を茹でて楽しむ 思いのほか美味しかったNewDaysのお土産

 さて、蕎麦の次は善光寺の門前町である大門通りからも程近い 繁華街、「権堂(ごんどう)」で見かけた信州名物「おやき」の店。

 お土産屋さんではなく地元の人向けの販売所で、おばあさん達御用達の店であるらしい。観ていると何人もが買って行くので、美味しいに違いなしと睨んだ。昼を食べた後だったが、一つ買って食べてみた。ボリューム満点で、中にはぎっしりと大好きな「野沢菜(長野市に近い温泉で有名な野沢の特産品)」が詰まっていた。さいたまで買うと「野沢菜漬け」は少量でも結構な値段がする。なのにこの「おやき」はいくら本場とはいえ、採算を考えていないのではと心配するくらいの量が詰まっている。

 あまり美味しかったので、食べた後にすぐ三個ほどを買って、お土産に包んでもらった。野沢菜だけでなく、中の具は他に大根やキャベツなどもある。大根のものも買ったが、私はそれを食べていないので感想が書けない。

 上田や志賀高原、「真田の庄」などで食べた「おやき」はもう少し扁平であって、しかももっと硬く焼かれていた様に覚えている。今川焼きのように一律のものではなく、「おやき」は土地によってバリエーションがあるらしい。

 この店「ちとせや」さんのものは、ほうろくで焼いて蒸かす方式で「西山風」というらしい。

権堂で見かけた「おやき」の店 信州名物の「おやき」
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定食屋さんの献立(野菜炒め定食)

 このところ、何度か長野に出張が続いている。この善光寺詣りも何度目かの出張の合間(早朝)を利用したものだが、そんな仕事での昼食はやはり好きなものなので蕎麦屋さんへ行くことが多い。毎回「蕎麦」とうのもなんであるから、時には別の店にも行く。

 「権堂」近くの居酒屋さんがやっている昼定食で美味しいものを見つけた。写真は「野菜炒め定食」だが、他にもしょうが焼きや日替わりメニューなど10種類位の定食がある。値段はサプライズ。私の財布に嬉しい580円だ。

 勿論、写真の新鮮な野菜を使った野菜炒めや信州味噌を使った味噌汁は大変美味しいのだが、それにも増して美味しいものがあった。

 突き出しに付いていた、いや酒席ではないから「小鉢」か。その小鉢の漬物が衝撃的なものだった。薄くカレー粉で味が着けられていて、なんとも表現が難しいが、炒め物に良くあったすっきりとした味だ。野沢菜のようでもあるし、ぴりりとしたカイワレ大根や水菜のような味もする。

 ナンだろうか、と思って食後にご主人に聞いてみたら、「雪菜(ゆきな)」であるという。雪菜というものを始めて聞いた。勿論食べたのも初めてだった。帰宅後にNetで調べたら、出羽米沢の特産品であるようだ。いや、思わぬ発見であった。
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