
心の中に染透るような温かな笑顔が、そこに溢れていた。
話の様子から、彼女の高い教養が伝わってきた。
手にした厚い書物から推し量れば、病院に勤務する医師か、あるいは婦長さんなのではなかろうか。
|

楽しい語らいの後で、立ち去るご婦人を呼び止めた。
「Mam !」私は歩き去ろうとする彼女の背中に大きく声を掛けた。
折角の出逢いなのに、彼女の写真を撮っていなかったことに気が付いたからだった。
「 Mey I take your picture? Please!」とまた大きな声を出してお願いした。
彼女は私の呼びかけに気が付いて、離れ去る歩みを止めて振り返ってくれたのだった。
彼女が見せてくれたのは、梅雨空の下、木陰の中で咲く可憐な紫陽花のような、そんな清楚な様子を想わせる華やいだ笑顔だった。
|